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ゲーム音楽これを聴け!

わたしは いだいな ぶとうか。 うわさでは すでで くまを たおしたことになっておる。 しかし じつは てつのつめを つかって いたのだよ。 わっはっは。 ゲーム音楽とプログレ、ジャズロックが中心。ドールも始めました。うちのドールが勝手にツイッターで呟いたりしてますので、そちらもよろしく。

 

『俯瞰した事実と客観的な虚構 このふたつで僕は世界をつくる』へ捧げる一文章 

黒い中折れ帽が、僕の部屋の外からのぞいている。
彼だった。
彼はいつも不意に現れる。
僕は、彼が現れる日をある程度予想して待ち構えているのだけど、彼はことごとく、僕のその予想を裏切って突然現れるのだ。
「人類の歴史は戦争の歴史だとよく言われるけど、これを見てごらんよ」
そう言って彼が差し出したのは、コンピュータの歴史年表だった。

紀元前150年~100年頃、アンティキティラ島の機械が使用される。
1617年、ジョン・ネイピア、ラブドロジー(ネイピアの骨)を発表。
1623年、ヴィルヘルム・シッカート、機械式計算機(カルキュレーティング・クロック)を発明。
1643年、ブレーズ・パスカル、歯車式計算機(パスカリーヌ)を発明。
1694年、ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ、加減乗除の計算出来る計算機を開発。
1833年、チャールズ・バベッジ、階差機関を考案、提示。
1887年、ハーマン・ホレリス、パンチカードシステムを完成。
1902年、矢頭良一、機械式卓上計算機を完成
1911年、ザ・コンピューティング・タビュレーティング・レコーディング・カンパニー(後のIBM)創立。
1937年、ジョージ・スティヴィッツ、Model-Kを開発。
…………

「人類の傍らには常に歯車と機械と計算の世界があったんだ。決して武器と食料だけじゃない」
彼は誰に言うともなく呟き、中折れ帽をさっと僕の眼前にかざした。
そこには、小さな歯車が無数にうごいていた。まるで生き物のようにうごめいているそれは、機械的なものには見えない。まるで、生きている歯車だった。
「見てごらん。この歯車たちが宇宙を動かしているんだ。それを生み出したのは、実は僕らなんだよ。アンティキティラ島の機械は、その一部なんだ。だから、僕らは宇宙の創造主ってわけさ。つまり僕らは……」
「いやいや、ちょっと待ってよ」
僕は彼の言葉を遮った。
「宇宙は、僕らが生まれる前からあったんだろ?ということは、僕らを生み出したのは宇宙じゃないか。何も無いところから宇宙が始まって、そこから僕らが生まれた。そして、僕らはそこへ行くために、長い時間を機械とともに生きてきたんじゃないの?つまり、生まれ故郷に帰るために、僕らは機械を発展させてきたんじゃないの?」
すると、彼は大げさな手振りで肩をすくめてみせた。
「全く……キミはやっぱりまだまだ浅はかだねえ。宇宙が僕らを生み出したって?故郷に帰る?何を言ってるんだ。それは逆だよ。僕らが宇宙を作ったから、宇宙は存在しているんだ。それにね」
にやり、と彼はいびつに唇をゆがめて笑った。僕は彼のこのゆがんだ笑顔が好きだ。
「僕らは、宇宙に拒絶されているんだよ。まるで反抗期の子供だね」
「拒絶されている…?」
「考えてもみてごらん。宇宙が僕らを受け入れてくれるのなら、なにも宇宙船や大掛かりな機械など必要ないじゃないか。宇宙服を着ないで宇宙へ出ると、体内の血液が沸騰して、僕らは爆発してしまうんだよ。ほら、明らかに拒絶されているんだ。そこに、僕らは無理矢理出かけようとしてるわけだ。何のために?」
さあキミの番だ、とでも言いたげに彼は手のひらを僕の目の前に差し出した。
「何のためにって……宇宙に住みたい、から?」
「住めないのに、住みたいのかい?」
「いや…そう言われると…」
ふう、と彼は息をついて、僕を気の毒そうに見る。
「まあその話は後でゆっくりしよう…。ところで、君はビッグバンを信じている?」
「信じるもなにも…そこから宇宙が始まったんじゃないの?」
「君はその目で見たのかい?」
「見られるわけないよ。遠い昔の話だもの」
「そんなもの、君は信じられるの?」
「いやあ…だって、偉い人とか天才なんかがそう言ってるし…」
「全く、なんて浅はかなんだ!!いいかい?ビッグバンなんて、そんなものは無かったんだ。考えてもごらん。ビッグバンの前はどういう状態だったんだい?説明出来る?」
「いや、それは…世界中の天才たちが研究してることだし、難しくて僕にはわからないよ」
ふふん、と彼は鼻で笑った。
「そりゃそうさ。だってそれは間違っているんだからね。つまり、僕たちが天才だと思っている人たちが、大きな虚構を作り上げて僕らに信じ込ませているんだよ。もっともらしい法則や計算を見せつけてね。けど、それは違うんだ。さあ、見てごらん。これが宇宙の真実なんだ!!」
彼の中折れ帽がどんどん巨大化していく。しまいには僕を覆い、僕の部屋を覆い隠し、それでも飽き足らず、中折れ帽は空を真っ暗にさせるほど大きく、大きくなっていく。
まわり続ける無数の歯車。これが宇宙の真実の姿なのだろうか。とすると、かの文豪が死の間際に見たという歯車は、もしかすると宇宙の真実の片鱗であったのだろうか。
そして、宇宙の真理をかいま見たゆえに、彼は命を絶ったのか。
宇宙への興味は無限である。説明がつかないから、興味がつきない。しかし、彼は真実の姿を知ってしまったゆえに、生きる興味を失ったのか。
壮大だと思っていた宇宙が、こんなものなのか、と知ってしまったがゆえに。
歯車が空を覆いつくし、無数の光を放っている。あれは星じゃなくて歯車だったのか。
しかし、これが宇宙だって?本当に?
僕には信じられない。
宇宙を作り出したのは、歯車だって?そんなの馬鹿げてる。それこそ、虚構じゃないか。
空をよく見ると、彼の姿が歯車の中にたたずんでいた。
「回り続ける限り、宇宙は存在しつづけるんだ」
彼の声が、どこか遠い空から聞こえてくる。
「宇宙は膨張しているんじゃない。回っているんだよ。広大な渦を巻いてね。その渦は歯車なのさ。宇宙の動力は歯車なんだ。僕が生み出したのは、もっともっと小さな歯車だったんだけどね…」
銀色に光る円盤。手のひらサイズの、光の加減によっては七色に輝く小さな円盤。それが、僕の部屋を滑空している。
気が付くと、円盤はパソコンの中に吸い込まれていった。CDドライブがけたたましい音を立てて動き始める。勢いよく円盤が高速で回転している。
パソコンに繋がれたスピーカーからは、とてつもない大音量で音楽が流れはじめた。

「MODEL-K」

パソコンの画面には、そう表示されていた。
空には暗雲が広がり、大小様々な歯車が勢いよく回転している。その歯車の一つ一つが、音楽を奏ではじめている。

「何だ…つまり、CDを聴いてくれってことか…」
彼の悪い癖だ。自ら作り出した大掛かりな幻想を使って、盛大な演出を施して僕にわかったようなわからないような言葉を投げかけては、楽しんでいる。
全く、彼は一筋縄ではいかない。
しかし…と思った。
「僕が作ったのは小さな歯車」…か。
大げさなことをするわりには、どことなく小心者な部分が見え隠れする、そんな彼の言動が僕は好きだ。

この回り続ける銀色の歯車こそが、彼が作り出そうとしている「世界」という作品の、その一欠片なのだろう。
彼の作る無数の歯車が、今、僕らの見ている「常識の世界」を変えようとしている。
僕は、それが宇宙すら変えてしまうことを願っている。
いや、きっと彼ならやってのけてしまうんだろう。
小さな…本当に小さなことを少しずつ積み重ねて。
手のひらに乗るような小さな折り紙でも、折りたたみ続ければその厚さが地球から宇宙まで到達してしまうように。

そして僕はまた、彼が不意に訪れる時をひたすら待ち続けている。

―以上の文章は、小倉久佳氏の作品『俯瞰した事実と客観的な虚構 このふたつで僕は世界をつくる』に対する感想代わりの文章であり、その内容は全てフィクションである。

文責:カシマ
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Category: ゲーム音楽作曲家

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